擬態


擬態している虫を見つけてしまった。
見とれてしまって出勤時間に遅れてしまいそうになる。




この虫は枝になりきっている。
なりきっている時は自分という感じ方も消してしまっているのかもしれない。
擬態は、枝としてはもはや芸術的で、誰もが枝だと思うと思う。
でも、肝心なところが惜しいなと思う。場所が。

「ここ壁やで。
壁に枝は、あんまり張り付いたりせえへんから。」

そう話かけてみるけれど、虫と人とは言語が違うから届かず。

でもこのうっとりするほどの茶色い羽。
ところどころ斑らになって、枝の色の自然な感じを絶妙に身にまとってる。
何を食べたらこうなれたんやろうか。
枝にしよう!って決めたんはなんでなんやろか。
夜もこんな色のままなんやろか。
枝以外にもなにかになれるんやろか。
聞きたいこといっぱいで、後ろ髪をひかれながらも
現実的に、出勤する。しかない。

今もまだあそこの壁にいてるんやろか。
壁は、、、目立つよ。