10月の色:ドラブ

「ドラブ」色は、色名の中でも、珍しく後ろ向きなイメージで使われる言葉を源としている色である。「陰気さ」や「無関心さ」、「面白みのなさ」などを表現しているドラフという形容は、たとえば、「彼のドラブな人生を、輝かせるようなことは何もなかった」などのように用いられる。

 オリーブドラブ色には、戦争などで使われてきたことのイメージが我々の中に刻まれてあるだろう。資料館などに行けば、このようなドラブ色をした武器や装具などを見ることができる。戦争時に使われた軍事用品の多くは、このドラブ色で塗装されていることが多い。塗料として調合が簡単だったということもあるだろうが、心理的にも、目立たないイメージ、隠れられるイメージ、土や泥や埃のようなふるまいをもつ色、没個性的な色イメージということが戦時中の人々たちを落ち着かせたのかもしれない。

個人としてではなく、集合的な塊として、戦うことが求められる。花のように目立つオレンジや赤のような進出色ではなく、一歩一歩繁り、その場を覆い尽くすような地道な良さもこの色彩にはあるのだと思う。質を求めるのではなく量の中にあり、今この一瞬を生きるための色彩なのかもしれない、と思う。

色彩には歴史がある。人々が歩んできた魂のことばのようなものが、このドラブ色にも宿っていると思う。