12月の色:茄子紺色

茄子紺色。
少し深めの紺色を帯びた紫で、ごく暗い紫、とされている。



江戸時代より、濃く染められた藍染に、蘇芳でさらに染め重ねられたことで生まれたのがこの色であるとう言われる。蘇芳で染め重ねられると、黒みを帯びた赤色が加えられるようなイメージになる。
つまり、茄子紺色とは、ナスの実のように、「赤みを帯びた紺色」とされている。

赤みを帯びた紺色。
ナスの漬物などでみる色彩も、この画像の色よりもう少し黒みの強い色になるだろうか。
ナスが調理過程で魅せる、自らの色をぐーっと落ち着けて奏でる茄子紺色は、黒光りしたような紺色で、どっしりと食卓を彩る。他の食材の色彩の豊かさを広げてくれているのは、この茄子紺色のおかげなのではないか。
この茄子紺色は、料理人からも頼りにされる色彩だという。

「赤みを帯びる」ということは、色彩がもつ特性であることをゲーテが見出した。
光の性質をもつ黄色が、赤みを帯びて溌剌に成熟してゆく様子以上に、
闇の性質をもつ青が、赤みを帯びることの方が、まったく見えにくい。
茄子紺色は、闇の赤みを帯びる過程に現れる色彩である。

「私」でも知らない「私」の奥深くの世界があって、
そこは光もあまり届かない場所で、見ることことも触ることもできない。
そこで何が生まれ、何が起こっているかわからない。
そんな世界とともに「私」はできている。

日常に受けとめられなかったことの数々が、
深いところで1つ1つ表情を変え、
秘密裏に物語が進んでいって、ふと顔を出して呼吸しているような、
そんな魅惑の表情が、茄子紺色なのかもしれない、とふと思う。

魔法使いも昔からこういう色が、大好きだ。
彼らも日常ではない、深く広いところで生きている。