「くれよん」という道具とともに


新しい「くれよん」の箱ができた。
「くれよん」は、私たち色彩心理学療法士にとって、
重要な道具で、仕事の相棒だ。

「色彩心理学」ということがあまり認知されていなかった15年前、
この研究所も始まったばかりで、
「くれよん」はその時もずっとそばにあった。
まだいくつかの小さな会社も、くれよんを作っていた。

でも今は、「くれよん」自体が、少なくなった。
無くなるまではいかなくとも、少なくなった。
「くれよん」に代わるものはありますよ。と言われても
そうは思えない。




「色鉛筆」ではなく、「くれよん」を相棒に選んだ。
それは、童心にかえれるからだ。

線を、 きっちりと引かなくても、
「くれよん」はよかった。

中を、 きっちり塗らなくても、
「くれよん」はよかった。

いつからきっちりと線を引くことに、
いつからきっちりと中を塗ることに、
敏感になったんだろう。思い出せない。

 私の心の中を動くイメージたちは、 そんなことどうだっていいんだな、と、
「くれよん」を手にすればわかった。
はみ出す自分を
許せたんだと思う。


この箱は何度でも使える。
それだけ丈夫に作った。
多少ぶつけても、多少汚れても、丈夫で分厚い箱にした。
仲間たちのそばで、できるだけ無邪気に存在してくれるように願いながら。

黄色い落ち葉の絨毯を歩いていると、
不器用でどうしようもないなと思えてきた。
でもまあ、しかたない、と、落ち葉をふむ音は言ってくれたように聞こえた。