1月の色彩:鶸色(ヒワ)

令和2年のはじめの月には、「鶸色」を選んだ。
かなり黄色に近い黄緑色を表す鶸の色。





鶸と書いて”ヒワ”と呼び、これは、鳥の鶸の羽毛のような色を示す色名。
ちょうど冬が、いよいよ深くなる時期、
この小鳥は、日本に群れをなしてやってくるという。
四季折々の変化に敏感な日本。
昔の人たちは、鶸が日本にやってくることを見つけると、
「冬の寒さもいよいよだ」と感じ、身支度をしたという。

鶸色は、室町時代(1336〜1573年)頃には使われていた色で、
藍で下染して黄檗(きはだ)で重ね染めして染色されていた。
450年近く前から親しまれていた色だと考えると、
鶸の鳥が、古えから永くいのちを繋いで、
その羽毛の色を私たちの目に、運んでくれている長い歴史を思う。

枯れ木にとまる鶸の姿を、目を閉じて想像してみる。
想像することで、大抵のもののある程度は近づくことができる。

想像した冬に立つ鶸の姿は、私には「希望」にうつった。
時間を止めたように、ひっそりと呼吸する仮死状態の木々があって。
「おおい、もうそろそろ起きて緑を見せてくれよ。」と思えど、
真冬の真ん中にいると、もう春は来ないんじゃないかと感じてしまうほど
永遠に寒いし、暗い。
冬はそれほど深く、重たいものであってほしい。
私がもし冬なら、そう在りたいと思うから。
生命がいずれたくましく、一斉に芽ぶく力を、水面下で蓄えるための
静かなときであってほしい。

褐色づいた、華やぐ色のない枝葉に
身軽に素早く動く「鶸」がとまる。
「冬がいつまでも終わらないわけではないよ」と
やがてくる希望を告げてくれるような、
軽やかな生命のはじまりの色。鶸色。

自然は、途轍もない関係性の網でできている。
知らないところで物語がつづいている。
せっかく生きているなら、いろんな物語を知りたいと思う。
鶸の物語も、もっと知りたいと思う。
小さいのに凛々しい色だ。
そんな色に、私もなれるだろうか。